従来の抗がん剤が効かない患者に、がんを攻撃する免疫細胞を活性化する薬を投与する小規模な臨床試験(治験)で、一定の効果が確認されたと、愛知医科大と国立がん研究センターなどの研究チームが、米医学誌に発表した。
チームは治験規模を拡大して効果を詳しく調べ、早期の実用化を目指す。
一部のがんでは、「制御性T細胞」(Tレグ)と呼ばれる細胞が過剰に働き、がんを攻撃する免疫細胞の機能を低下させることが知られている。そこで、チームは、Tレグを減らして免疫細胞を活性化し、がんをたたく作戦を試した。
白血病の治療薬「ポテリジオ」に、Tレグを減らす作用があるとの研究報告が出たことが、治験検討のきっかけとなった。
チームは2013年から、国立がん研究センターなど4か所で、肺がんや食道がんの患者10人にポテリジオを投与した。最長で約9か月間、経過を見たとこ
ろ、全員、Tレグが減り、このうち、4人は、がんが一時、縮小したという。一部の患者で皮膚に発疹が出たが、重い副作用はなく、治療の安全性は確認できた
としている。
Tレグの発見者は坂口志文・大阪大教授(免疫学)で、ポテリジオを開発したのは協和発酵キリン(本社・東京)だ。医療関係者の間では、日本発の研究成果と薬剤の組み合わせによる新しいがん治療法に発展する可能性を期待する声も出ている。
近年、免疫の研究が進み、従来、効果が不十分とされていた「がん免疫療法」も見直されている。今回と異なる仕組みで、免疫細胞のブレーキを外す新薬も登場している。